富士講の「富士山根元八湖霊場」
山梨県南都留郡忍野村(おしのむら)、富士山の北麓に湧く湧水池の総称が忍野八海(おしのはっかい)。富士山の雪や雨が溶岩の間で長い年月をかけて濾過され、湧出するもの。
忍野村周辺の盆地には、広大な宇津湖(うつこ)と呼ばれる湖がありましたが、延暦19年(800年)の富士山の延暦大噴火(北東山腹の大噴火)で鷹丸尾溶岩と檜丸尾第2溶岩が流出。
宇津湖は流れる溶岩によって忍野湖と山中湖の2つに分断されました。
やがて浸食がすすみ、忍野湖は、桂川へと水が流出し、干上がって、湖底にあった湧水群が地表に現れます。これが忍野八海です。
富士山の伏流水が溶岩層の上にある砂礫層(忍野古富士上部火山砂礫層)を流れ、最上部(地表部分)の火山砂礫・粘土層の隙間から湧出するものです。
16世紀後半に長谷川角行が富士山麓の湖沼で水行を行ったとの伝承にちなみ、1843年より、忍野八海においても、8つの小さな湧水を巡って水行を行う「富士山根元八湖」と呼ぶ巡礼が行われるようになった。
それに伴い、富士講信者によって出口池から菖蒲池までを巡る道が整備れた。
天保14年(1834年)、仏法を守護する八大竜王(はちだいりゅうおう)が祀られた。
- ①八海最大の出口池(難陀竜王/なんだりゅうおう)
- ②御釜池(跋難陀竜王/ばつなんだりゅうおう)
- ③底抜池(釈迦羅竜王/しゃからりゅうおう)
- ④銚子池(和脩吉竜王/わしゅきちりゅうおう)
- ⑤湧池(徳叉迦竜王/とくしゃかりゅうおう)
- ⑥濁池(阿那婆達多竜王/あなばたつだりゅうおう)
- ⑦鏡池(麻那斯竜王/まなしりゅうおう)
- ⑧菖蒲池(優鉢羅竜王/うはつらりゅうおう)
八つの小さな湧水の巡礼の道「富士山根元八湖霊場」が生まれた。
それ以後、忍野八海は、19世紀後半まで継続的に道者・富士講信者が訪れる巡礼地となった。
道者・富士講信者は各湧水で水垢離を行い、翌日、富士登拝を行った。