川根本町徳山は、南アルプス南部の山間にある集落だが、この地には文化財が多く残され、また古来よりふたつの重要な民俗芸能が伝えられてきた。そのひとつが「徳山の盆踊」であり、毎年8月15日の夜、浅間神社の例祭にあわせて奉納されている。
鹿ん舞
長い角を持つ鹿頭をつけた牡鹿役が先頭に立ち、ふたりの牝鹿役が従う。その後方にひょっとこ面つけた者が続く。お囃子の軽快なリズムにあわせて、紅白の綾棒を回しながら前後に飛び跳ねるようにして踊る。かつては、その年の20歳になった青年によって行なわれることになっていたが、現在は中学生が踊り手となっている。
「ヒーヤイ」
浴衣の上に京の舞妓風のだらりの帯をしめた娘たちが小唄に合わせて舞う、古歌舞伎踊りの初期の形態を残した古風で優雅な舞である。この舞をヒーヤイと呼ぶのは、唄の終わりに「ヒーヤイ」という囃子言葉がついているためである。かつては、男が女装をして舞ったが、現在は小中学生の女子が舞手となっている。
「狂言」
慶応4年に書かれた台本に「むかしより、猿楽とやら、口うつしおぼえしだき書きおくぞや」とあり、また、一番古い台本には「宝暦9年卯月」と記してあり、この狂言の起源はかなり古いことがわかる。台本には、14演目があるが、現在は「頼光」「新曽我」の2演目である。