藤守の田遊び

静岡県志太郡大井川町藤守・大井八幡宮で行われる「藤守の田遊び」。この田遊びは延暦年間(782年~806年)大井川流域で稲作を行っていた住民が,水の恵みに感謝し,治水を祈願するために川除け守護神を祭祀し,田遊びを奉納したのが始まりと言われています。

「田遊び」は新春にその年の豊作,を予祝する行事です。ここ藤守の田遊びは,特に開墾から刈り入れまでの稲作の課程を演ずるものが多く残されています。

外的(外祭)天狗

男児二人が手桶と榊の枝を持ち,外祭が行われる舞台を浄めます。

その後,天狗二人が竹を持って舞台を廻って浄めます。

浄めが終わると天狗は面を外し一人は太鼓役,一人は鼓役を務めます.

外的(外祭)カワラケ・膳四足膳

宮司,禰宜など八人が舞台に敷いた茣蓙に着席します.そこへ,給仕人が膳を手送りで運び各人の前に並べます.

的射

舞台の前から,鳥居の下に立てられた的に向かって宮司が矢を射ます。

矢を射終わると弓納め人が弓・矢・的を持って的場の森へ走って納めに行きます。

田遊

番外天狗

布製の鳥兜のようなかぶり物をして高下駄を履いた雌雄の天狗が長さ2メートルあまりの青竹の杖を持ち,左右に分かれて舞台の周囲を激しく打ち突いて舞台を祓い清めます。三回周り拝殿に戻ります。

第1番長刀

烏帽子をかぶり,袴をつけ襷をかけます.脚絆をつけ草履ばきです。長刀を持った前長刀,後長刀の二名が舞います。長刀の手と云われる呪師芸で舞台の結界作法の一つです。また荒草を薙ぎ払って農地を開拓する意味もあります。

第2番振取

藁で作ったショッコという円錐状の冠り物をかぶり美濃紙を幣状に裁って蓑のようにしたものを背負います。ショッコの先端には造花をつけ中程に面をつけます。袴をつけ襷をかけ脚絆をつけ草履ばきです。白扇を持ち拝殿から御獅子を迎え誘導して和ませ慰める振りで舞います。獅子が動き出すまでの短い舞で第3番の御獅子と連続しています。

第3番御獅子

振取に引き続き行われます.五人立ちの獅子で眉毛,鬚,鼻毛など白紙を細く裁ったもので飾られています。この獅子は牛で祭神の身代わりと考えら「オシンサン」と称えられています。御獅子は振取の動きに相対しゆっくりと動きます。

第4番鍬入

お供えの牛の舌餅を柳の枝の箸に差したものを持った二人が登場します。二人は『などようよう。鍬入れをしょうずるようは…』という詞章を唱えながら餅を箸から抜いて後に投げます。鍬を入れて田仕事を始めることを表すと考えられています。

第5番荒田

八人の青年が手をつなぎ,円陣を作って『荒田のよしとし,よし世よし,田を作らんば…』と詞章を唱えながら跳ね回ります。荒野を開拓し,田を拓く作業を表すと考えられています。

第6番寄塗

お供えの牛の舌餅を柳の枝の箸に差したものを,持った二人が登場します。二人は『などようよう、よせをぬろうずるようは…』という詞章を唱えながら餅を箸から抜いて後に投げます。田の水が漏れないよう畦に土を塗る作業を表すと考えられています。

第7番水口申:現在は行われていません。

第8番鳥追

八人の青年が手をつなぎ円陣を作って『などようよう,皆口米をかみしめかみしめ…』と詞章を唱えながら跳ね回ります。作物を荒らす鳥や悪害をもたらす悪霊を追い払うものです。

第9番山田

舞台中央に田に見立てた長椅子を置きます。木製の鍬を担いだ農夫が5人登場し長椅子を取り囲んで鍬をふるいながら『目出度きことは大井川の流れ久しき…』と順に歌います。

第10番徳太夫

9番の歌の途中で万燈花を飾り付けたショッコをかぶり紙蓑を背負い酒徳利を手にした徳太夫が登場します。山田の正面に進み『ようようよう,どっこいしょ』と唱えて山田打ちの労をねぎらって酒を振るまいます。

第11番麦搗 現在は行われていません

第12番田植

帽子をかぶり,白装束に太刀を腰に差し高下駄を履いた殿と頂きに榊の小枝を差したショッコをかぶり首に振りまんがをかけた供が登場します。殿は三宝に酒を載せ供と共に神前に向かいます。

第13番代草

牛の舌餅を柳の箸に刺したものを持った二人が登場し『などようよう代草を御かまに…』の詞と共に餅を後に投げます。水田に生えた雑草を除草するものです。

第14番孕早乙女

をはき,襷をかけ鼓を持ち榊の小枝を頂きに差したショッコをかぶり登場します。『やあはり,きょうがりやな,…』の詞を唱え舞台の周囲を走って廻ります。舞台の片の真ん中で足踏みし鼓をならします。鼓は孕みを表し子孫繁栄と農作物の豊作を願うものです。

第15番小編木

烏帽子をかぶり,袴をつけ襷がけで草履を履いた二人が肩車に乗せられて登場します。笛太鼓に合わせてネジリ木と竹ササラをすり合わせて舞います。『あさあなんえる,とうのおんえるな,…』の詞を唱えます。

第16番早乙女

氏子の中で5歳になった男児が氏子入りをする儀式です。下禰宜が神前で男児を抱きかかえ三拝します。御神酒と牛の舌餅を頂いて退場します。これまでの神恩を感謝し将来の幸福を祈願するものです。

第17番高野殿

烏帽子をかぶり臼木綿の装束に太刀を腰に差し高下駄を履き三宝を持った殿と濁り酒を持った供が登場します。神前で『いつにもすぐれて藤守の郷…』と二人が言葉を述べます。稲がよく稔っている事を祝って濁り酒を酌み交わします。

第18番棒

造花をつけたショッコをかぶり紙蓑を背負い脚絆草履ばきで長さ六尺の樫の棒を持って二人で雄壮活発に舞います。棒の手と呼ばれる呪術芸の一つで舞台の結界作法の一つです。藤守の郷を守る舞です。

第19番神子舞

榊の小枝を差したショッコをかぶり笹の葉を束ねて箒状にしたものを持ち笛太鼓に合わせて舞台を駆け回り四隅で足踏みをして笹箒で舞台を祓い清めます。神の子として舞台を祓い清めるものです。

第20番間田楽

烏帽子をかぶり袴をはき鼓を両手で挟んだ才取りを先頭に田の字を模した造花で飾ったショッコをかぶり紙蓑を背負い柳の枝で造った箸を一本を両手で挟み持った七名が続いて舞台に登場します。稲の成長ぶりを喜び祝うものです。

第21番猿田楽

紅白の万燈花で飾ったショッコをかぶり紙蓑を背負います。脚絆草履履きで先頭の者は才(先)猿といい袴をつけ飾り花の元に猿の面をつけます。二列になったり円陣を組んだりして華々しく舞います。万燈花は桜の花を表し桜の花の満開は稲の豊かな稔りの予告を表しています。

第22番宝来

小枝の付いた青竹三本を交差して三脚をつくりその上に締め太鼓を載せます。五人がこれを取り囲み太鼓を打ちながら『三島にいは諸神へのおんを…』と歌います。神に宝が来ることを祈り迎える謡です。

第23番稲刈

前の宝来に引き続き行われます。太鼓を打ちつつ『空みんれば,そらこそよけれん…』とうたいます。稲の刈り入れを祝うものです。

舞台を廻って浄めます。鯛釣へと進行していきます。農作業の行程はここまでですが、漁業の町ですので同じように漁業の作業が演じられていきます。

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