静岡に古くから伝わる伝統の「郷土料理」

静岡に古くから伝わる伝統の「郷土料理」を紹介します。日本三大深湾の駿河湾の海の幸、富士山を始めとする3,000m級の山々がもたらす山の幸。静岡県は豊かな農林水産物に恵まれ地元の食材を使った郷土料理が今も形を残しています。

わさび漬け

山葵漬けは、わさびの刻んだ葉や茎、根を酒粕に漬けた漬物です。、旅の土産などでもらって、その味わい深さのとりこになったと言う方も多いです。

わさびの発祥は、慶長年間(1596~1615年)に、それ以前から静岡市葵区の有東木地区の佛谷山(ぶっこくさん)に自生していた野生のわさびを、同地区の湧水源付近に植えたとされています。

今に伝わるわさび漬けは、1751年から12年間続いた、宝暦の時代に完成したとされます。
当時、静岡市の一部で親しまれていた、わさびの糠漬けをヒントに作られたそうです。当初は味噌や塩に漬け込む方法が試されたようですが、最終的に酒粕に漬け込む方法が考案され、今に至ります。

鯖の箱寿司

伊豆地域で祭りの日に作られる郷土料理です。元々は漁師飯のため、地元で捕れたサバを使う。魚の身をほぐしてそぼろ(地元の呼び名はおぼろ)にしたものや、にんじんやしいたけなどの煮物を木箱に詰めた酢飯の上にのせた箱寿司。

1261年に日蓮上人が鎌倉幕府によって伊豆に流刑になった際に、上人をかくまった漁師が朝夕の食事を、井桁の重箱で運んだことが箱寿司の由来といわれています。おぼろは地元でとれた魚を使うため、サバ以外に地域によってアジやキンメダイを使うところもあります。

金目鯛の煮付け

10月~3月下旬の金目が、一番脂がのりおいしい時季。静岡県伊豆半島は金目鯛の産地であり、下田港は金目鯛の水揚げが日本一の漁港です。

伊豆で捕れる金目鯛は3種類あり、地金目鯛(ジキンメ、稲取キンメ、日戻りキンメなどとも呼ばれる)、島キンメ(シマキンメ)、沖キンメ(オキキンメ)である。地金目鯛が最上級の金目鯛で、脂ののりと味が一番いいとされる。1本釣りで捕獲するが、水揚げ量が激減しており入手困難となっているブランド金目鯛です。

東伊豆町の稲取漁港で水揚げされる金目鯛は、この地金目鯛であり、稲取キンメと呼ばれています。金目鯛の代表的な料理は刺身や煮付けであり、煮付ける場合、切り身あるいは一匹そのままの姿を醤油、酒、砂糖で甘く煮る。近年は、刺身、煮付け以外のメニューも多く開発されています。

心太(ところてん)

ところてんは、テングサを煮溶かし濾して、型に流し固めたものです。 古代にはテングサの性質から凝海藻(こるもは)と呼ばれていました。

「心太」と書いて「ところてん」と読むのは、材料の天草が「凝海藻[こるもは]」と呼ばれていたことに由来する。 凝海藻の名は煮るとどろどろに溶け、さめて煮凝るようすを表すとされる。 その材料からできる製品を、「凝る」を語源とする「心」と太い海藻という意味の「太」という字をあて、「ココロブト」と呼んだ。

「こころふと」と呼ばれていたのがなぜ「ところてん」となったのかは、「こころたい」「こころてい」「こころてん」と変化し、最後に「ところてん」と呼ぶようになった説が有力のようです。しかし、これにも諸説あり、正確なところは未詳の部分が多くあります。

沖あがり

沖あがりは、生の桜エビを豆腐やねぎと一緒にすき焼き風の味付けで煮込んだものです。沖から上がった桜エビ漁の漁師が、漁の反省をしながら酒の肴に食べた漁師めしの鍋料理です。

国内で桜エビが水揚げされるのは駿河湾だけであり、静岡市の由比港と焼津市の大井川港のみです。桜エビ漁はアジの綱引き漁に偶然桜エビが入ったことから、明治27年から始まった。

漁期は桜エビの保護のため年2回と限定し、春漁は3月中旬から6月初旬、秋漁は10月下旬から12月下旬となっています。

静岡おでん

静岡おでんは、牛すじ、黒はんぺん、練り物、大根、卵など具材を全て串に刺し、色の黒いだし汁で煮込み、青のりや魚のだし粉をかけて食べる静岡市の郷土料理です。市内では、駄菓子屋でも売っているため、おやつがわりに子どもの頃から慣れ親しんでいる人が多いです。


静岡おでんのはじまりは大正時代だが、第二次大戦後には、廃棄処分されていた牛すじや豚モツをおでんの具材としたところ、人気が高まったと云われる。また当時から駿河湾で水揚げされる魚介類を利用できたため、黒はんぺんなど魚のすり身を使った練り製品がおでんの具に使われていました。

黒はんぺんのフライ

黒はんぺんは、鯖、鰺、鰯などをすり身にして茹でた物であり、形は半円形で色は灰色の練り物です。焼津の特産品であるが、ほぼ県内全域で食されています。

県外では、はんぺんといえば白い練り物だが、静岡県では、通常「黒はんぺん」のことを指します。白いはんぺんは、魚の身の部分だけ使っているため白くなるが、黒はんぺんは魚の骨や皮を丸ごと練り込んでいるため灰色になる。黒はんぺんは、フライの他、煮物、焼き物、さらには静岡おでんの具材にもなっています。

黒はんぺんをフライにした「黒はんぺんフライ」は、家庭でも作られ、スーパーなどのお惣菜コーナーでも販売されている。魚のうまみが凝縮されたはんぺんを油で揚げることで香ばしさも加わり、地元では子どもから大人まで世代を超えて親しまれているお惣菜です。

とろろ汁

「とろろ汁」は自然薯をすりおろし、だし汁と味噌で割ったもので、麦飯にかけて食べる郷土料理です。自然薯の収穫時期が10月中旬から12月なので、秋から冬にかけてよく食されます。正月2日に食べ、1年間の健康を祈る地域もあります。

自然薯は「やまのいも」ともいわれ、長さ1.5メートル、直径3センチほどの大きさ。本州、四国、九州の山野に自生するが、栽培をしているところもある。静岡県内の野生の自然薯は、主に中部地域が産地だが、西部地域、東部地域でも収穫される。

「とろろ汁」の歴史は古く、東海道五十三次の20番目の宿場町であった丸子(まりこ。現在の静岡市駿河区丸子地区)の名物で、スタミナがつく料理として旅人に人気があったと云われてます。十返舎一九の小説『東海道中膝栗毛』や歌川広重の浮世絵「東海道五十三次」、松尾芭蕉の俳句「梅若菜 丸子の宿の とろろ汁」にも登場します。

なまり節

なまり節は、新鮮なかつおを原料として造られる焼津の特産品で、明治以前より生産されていました。なまり節はそのまま食材として利用できます。旨味が凝縮されているため、煮物や炒め物、サラダにもぴったりです。お子様からお年寄りの方まで安心して食べられてます。

鰹節となまり節違いは製造工程にあります。なまり節は「煮熟」の後に「骨ぬき」して表面の水分を乾燥させたものです。「焙乾」の作業で1回目の焙乾を一番火と云い、この段階の節をなまり節と呼んでます。

炊き込みご飯
サラダ

「二日目は矢次早まろ初なまり」。これは江戸時代の画家で、俳諧にも通じた枠人、酒井抱一が詠んだ句です。この「初なまり」が、すなわち今でいうなまり節です。なまり節は、江戸時代の枠人に愛され、料理通の間で食べ継がれてきました。

がわ

「がわ」は、生のカツオ、きゅうり、梅干し、青しそなどを刻んで、味噌と共に水に入れる「冷やし味噌汁」で、漁師がカツオ漁に出た際に船上で作ったのが始まりとされる漁師めしです。

氷を入れ、味噌を溶かそうとかき混ぜるときに「ガワガワ」と音がするため、「がわ」と呼ばれるようになったと云われる。元は漁師めしですが、御前崎の一般家庭でも夏の食卓に登場することもあります。

全国屈指のカツオの漁獲量を誇る静岡県。中でも静岡県最南端に位置する御前崎港は県内でも有数の漁獲高を誇る港です。5月に水揚げされるカツオは「初鰹」と呼ばれ特に人気です。、御前崎港周辺で端午の節句に合わせて掲げられる「カツオのぼり」は、夏の風物詩になっています。

初鰹
カツオのぼり

たまごふわふわ

材料は、たまごとだし汁だけで、「ふわっ」と仕上げた風味豊かな泡のようなふんわりとした食感です。

だし汁に、塩・薄口しょう油・こしょうを加えてすまし汁を作り、2つに分ける。一方のすまし汁は鍋のふたをした状態で火にかける。もう一方のすまし汁には、卵とみりんを加え、泡立て器でクリーム状になるまでよく混ぜる。鍋で火にかけていたすまし汁が煮立ったら火を止め、クリーム状に泡立てた卵を一気に流し込み、ふたをして蒸らす。

「たまごふわふわ」は江戸時代に袋井宿で提供されていた料理で、袋井市観光協会が地元の新名物にと再現・復活させたものです。江戸時代の文献「仙台下向日記」によると、袋井宿の大田脇本陣で宿泊客の朝食に出されたと云われてます。

安倍川もち

つきたての餅に砂糖を入れたきな粉をまぶしたもので、静岡市を中心とした中部地域の郷土料理です。現在も安倍川橋のたもとには、安倍川もちを提供する店が軒を連ね、中には200年の歴史を誇る老舗もみられる。

天正10年(1582)に駿府に生まれ、唐(から)・天竺(てんじく)・阿蘭陀(おらんだ)をはじめ諸国を渡り歩いた渡邊幸庵という人物が物語ったものを記した『渡邊幸庵対話記』に、丸子(静岡市)に伝わる「五郎右衛門餅」の話が載っています。

「安倍川もち」の名前は県内に流れる安倍川にちなんだものであるが、江戸時代、徳川家康が命名したという説と、東海道を旅する人々の間では安倍川の茶屋で売られていた名物として有名だったため、安倍川もちと呼ばれるようになったという説がある。江戸時代に十返舎一九が著した道中記「東海道中膝栗毛」にも登場している。


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